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大和はとても不機嫌そうに言った。
「このまま何も言わせず引かせろ」
「で、でも」
ああ、なぜだろう。
どうしても引き留めたくなる。
面倒臭そうに振り返った大和に桜はうつむく。
「かっこ悪いだろうが。お前に欲情して興奮しちまって」
桜はようやく自分の胸を隠す事に思い至った。
今更遅ぇよ、と大和は言ったが。
「また出直す」
ふて腐れたようにそう言うと大和は歩き出した。
「で、出直すって……?」
「明日も同じ時間に来い。来なかったら今日の事は忘れる」
桜は大きな傷跡を負った大和の背中を見えなくなるまで見つめていた。
戦いに終止符が打てるかもしれないと、そう思ったから桜は。
この気持ちが嬉しい方に向いているのだろうと心に言い聞かせた。
‐了‐
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