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それから冷たく突き放すように言った。
「今日のはなかった事にしてくれ」
「え……?」
大和は背中を向けて歩き出そうとする。
ああそうだ、と思い出したようにまた桜の方へ向き直った。
大和は着ていた服を脱いで桜に手渡す。
桜は訳が解らず立ち尽くしていると、大和が言った。
「そのままじゃ帰れないだろうからな。いや、お前だったら素っ裸でも仲間のとこに戻りそうだが」
桜を一瞥し、今度こそ本当に歩き出した。
桜は呆然と立ち尽くす。
今日のをなかった事にしろというのはまた明日からは敵同士に戻るという事だろうか。
「ま、待て!」
何も考えずに叫んでいた。
いや、もしかしたら。
これまでの戦いが終えられるかもしれないとそう思って引き留めたのかもしれない。
大和は足を止めなかった。
我慢ならずに駆け出した桜は大和の背中に抱きつく。
どうしてこんな事をしているのか桜自身もよくわからなかった。
でももしかしたら戦いを終えられるかもと、そんな言い訳ばかりが頭に浮かぶ。
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