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「晴、こんな…イケメンに育っちまって…」
涼先輩はすっかりキャラを忘れて茶髪の男の子を凝視している。なんだか、心做しか目が潤んでいるように見えるのは俺だけだろうか。
「知り合い?」
肩を掴まれたままの祭が首を傾げながら涼先輩に尋ねた。
「俺が小さかった頃のな」
「そっか」
祭は振り返ってモデルの男の子を見た。
「良かったな、仕事してる姿を見られて」
龍一先輩も頷きながらその子を見る。
格好良いのは勿論だけど、なんだか他2人と違ってミステリアスな雰囲気を醸し出している。引き込まれると言うかなんというか…
「これは確実に俺よりデカい。どうしよう…この歳じゃもう勝てねぇ」
「いや待て、俺達はきっとまだまだ成長期だぞ?諦めるなよ」
龍一先輩は励ますように涼先輩の肩をぽんと叩いた。でも俺も大して背丈が高くないから知ってる。身長182cmを誇る龍一先輩がやると、ただの嫌味にしかならないのだ。これは所謂無自覚マウンティングって奴だ。
ただでさえ眉目秀麗博学多才の八字熟語を作り出してしまっている龍一先輩がこれをやるのは、涼先輩以外の一般人だったら確実にメンタルが殺られる。涼先輩は気にしなさそうだけど…。
「身長、気にするタイプなんだ?」
「いや、こいつよりはデカくありたいって思うだけだ」
祭は物珍しげに涼先輩に視線を戻した。この祭の反応だと、涼先輩は普段は自分の身長や見た目にコンプレックスを感じていないみたいだ。流石…。
涼先輩はようやく祭から手を離し、自分の拳をぎゅっと握った。
「俺も早くアイツの隣に立ちてぇな…」
その瞳には、以前よりも強い意志を感じる。
涼先輩の目に溜まった涙は零れること無く、涼先輩の瞳を一層輝かせていた。
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