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なんなんだよもう、めちゃめちゃ怖いわ!
俺は軽くパニックになりながら必死に走った。目の前には出口が見える。あと少しだ、もうこんな所嫌だ!
「うわっ!」
扉を開けて外に飛ぶ込むと、誰か人にぶつかる感覚がした。必然的に抱き着く形になってしまって俺はすぐに離れて謝ろうとした。でも何故か背中に腕を回されてしまって離れられない。なんだこいつ、2人目の変態か…?けどなんかこのハーブと柑橘が混ざったような匂い、普段から嗅いでいるような気がする…
「すみません、あの…え、祭?!」
「もしこれが僕じゃなくて他の誰かだったら、今頃時雨くんはどうなってたんだろうね」
身動ぎをして見上げてみると、案の定ご立腹な表情を浮かべた祭が俺の事を抱き締めていた。
「あぁ、よかった。祭で安心した」
「…そんな可愛い事言われたら怒れなくなっちゃうじゃん」
相手が祭でホッとした。さっきまで本当に怖くてビビり散らかしていたから、人前なのに祭の事をきゅっと抱き締め返してしまった。 祭は俺の様子を察知したのかぽんぽんと頭を撫でている。
「王子様とお姫様…」
「あ、ごめん…!」
扉から出ると同時に手を離してしまった2人が少しだけ頬を赤く染めて俺達の事を見上げている。俺は咄嗟に自分から祭を引き剥がして2人に笑顔を向けた。
「大丈夫だった?」
主にビビってたのは俺なんだけれども。俺はしゃがんで2人と目線を合わせた。
「うん、ありがとう。すごく楽しかった!」
「お姉さん優しい。お化け屋敷面白いね!」
2人とも無邪気な笑顔を浮かべている。無事に楽しめたみたいで良かった。
「俺達もいつかお姉さんの王子様になる!」
2人の頭を撫でていると、その手を取られて手の甲にキスされてしまった。可愛いな、小さい子は。
「お姉さんありがとう!」
俺は2人から懐中電灯を回収してから、2人に手を振って見送った。
「へぇ…この僕の前でよくそんな事が出来るね」
「…ごめんって」
手の甲にキスされた時にこれを見た祭は絶対怒るだろうなって思っていたけれども…やっぱりお怒りみたいだ。相手が子供でも容赦はしないのか。
恐らく後ろでヤバいタイプの笑顔を浮かべているであろう祭の方に、俺は顔を向けないようにした。
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