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「で、何しに来たの」
「君の様子を見に来たの。あと時雨くんそろそろ休憩時間でしょ。僕の所に来てよ」
祭は俺のスカート丈が気になるのか脚元に目を向けている。なんだか気まずい、俺だって好きな人がこんな事してるの嫌だし、まぁ祭が女装しても…身長はデカいけど顔は作り物みたいに綺麗なんだよなぁ。
「それもう少し伸ばせないの」
「これでも結構下げてるつもりなんだけど…」
もう既に短くカットされてしまっていてこれ以上は伸ばせない。当たり前の事だが普段はスラックスだから少し脚元が心許ない。でもアピールしないと優勝も出来ないし。俺は自分で勝ち取った物で祭とビュッフェに行きたいんだ、やるからには優勝するつもりだ。
「優勝したら一緒にビュッフェに行きたい」
「行きたいのなら僕がいつでも連れていくのに」
それとこれとじゃ訳が違う。自分でも祭に出来る事がしたいんだよな俺も。祭に対しては毎日ご飯を作る事くらいしか出来ていないから。
「迎えに来たんだろ。連れてってよ祭の所」
「あれ、お仕事は?終わるまで待ってるよ」
祭は教室から突き抜けて廊下にも伸びている列に目を向けた。お化け屋敷は大盛況なようだ。
「今は夕が一人でやってる。さっきまではずっと俺が頑張ってたから別にいい」
「ふふ、お疲れ様。僕が癒してあげるよ」
改めて祭を見てみるとシックな作りのウェイター姿が様になっている。今日はいつもと違って髪を横に流している。普段はわざと髪の毛をクシャッとさせている祭だけど、今日はストレートヘアのままだからまた印象がガラリと変わっている。これはこれで全然似合うのがまた流石って感じだよな。
「さぁ行こうか、時雨くん」
普段は祭だけがキャーキャー言われているけれど、今回は俺の脚に周りの視線が行っている。そんな思春期真っ只中のみんなを牽制する為か、祭は俺の手に指を絡めて歩き始めた。
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