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「いらっしゃいませ」
祭に案内されて教室に入ると、まさに格式の高い喫茶店って感じの空間が広がっていた。
「はぁ、これはまた」
「割と質素だよね」
いや何処が。何を言ってるんだ祭は。いきなり価値観の違いを押し付けてこないでくれ。
「さ、ここに座って。時雨くん」
祭に椅子を引かれて座ると、別のウェイターが水とメニュー表を持ってきてくれた。接客する人達は顔が良い人を選んでるんだろうな。周りを見るとみんなイケメンだ。それに…
「伊織さんはもしかして」
「時雨くん雪乃ちゃんの事知ってるの?僕の幼馴染なんだけどね、彼も女装コンテストに出るらしいよ」
祭は他人事のように話している。凄いな、素のままでもすごく綺麗なのにお化粧が加えられると更に綺麗だ。きっと優勝候補なんだろうな。
ふと伊織さんと目が合って会釈をされてしまった。美人でお行儀も良いなんて…なんだか劣等感を煽られている気分だ。
「嫉妬しちゃうからあまり僕の事以外見ないでよ」
「いや寧ろ…」
逆なんだけどなぁ。祭にその気が一切無いのなら気にしないべきだよな、忘れよう。でも伊織さんが女装コンテストに出るのならライバルだし美し過ぎるし、あの人に勝つにはどうすればいいんだろう。
まずは学年毎に2人ずつ選ばれる予選に突破して明日の決勝戦にも出られるようにしないと。しかし正直俺には奥の手がある。自分でもこんなに策士になるとは思ってなかったけど、やるからには美味しいご飯の為にも勝ちたいし。
「時雨くん考え事?」
「あーなんか祭のオススメお願いしてもいい?」
「…かしこまりました」
変に考えている事が伝わったら厄介だ。俺は祭の気を逸らす為にも適当に注文をしておいた。本人はあまり納得していないみたいだけど。
それにしても周りからの視線が凄いな…客として来てる生徒もそうだけど、従業員までチラチラとこっちを見ている。俺見ないでちゃんと仕事してくれ。
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