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祭からの砂糖を吐きそうになるくらいに甘々な接客を受け終えた俺はクラスの出し物の仕事を終え、女装コンテストの会場に来ていた。
女装コンテストは桜丘学園では毎年一番の人気イベントらしく、体育館は既に場所取りの人達で賑わっている。
「出場する方はこちらへどうぞ」
俺は受付の生徒の所に行き、受付を済ませた。
案内係に連れられて1学年の出場者専用の待合室に行ってみると…
「あぁ…」
龍一先輩がゴリラの群衆時々人間って言った理由が何となく分かった気がした。
確かにこれは…女装コンテストはクラスから1人必ず出場させなければいけないルールらしく、恐らく人が居ない中で無理やり出場させられた人が複数人判りやすく立っていた。
寧ろネタに走って明らかにガタイが良い人も何人か居るんだけども。本人達の目が若干死んでいる。
「あ、モブ男じゃん。こっち」
俺が入った途端に視線が俺に集中してしまってどうすればいいのか分からずに周りを眺めていると、誰かに話しかけられながら腕を引かれた。
「…えーと、ありがとう」
「藤堂 眞弥(とうどう なおや)。眞弥でいい」
運動会の時に俺の服飾係を担当していた女の子みたいな男の子だ。なんとなく予感はしていたけれど、彼もやっぱり出場するんだな。
彼は西洋ドールをモチーフにされたのかサイドテールで毛先にカールがかかった金髪のウィッグとロリータ服を着こなしている。
「眞弥よろしく。俺は」
「沢山時雨でしょ。祭の恋人」
知られているだろうなーとは思っていたけれど、愛人じゃなくて恋人として認識してくれている人なんて初めて見た。
「恋人って認識してくれてる人初めて見た」
「あぁ、まぁみんな現実を受け入れたくないんじゃない。俺は別にどうでもいいけど」
眞弥はそこら辺の事は本当にどうでも良いのかウィッグの毛先を弄っている。
「でも時雨の話はたまに聞く」
「なんで?あれ、龍一先輩と知り合いなんだっけ」
運動会の時も歳上の筈なのに呼び捨てだったからもしかしたら幼馴染とかなのかもしれない。
「龍一も祭もただの幼馴染だし家族の付き合いでしか話さない。どちらかと言うと夕から話を聞く」
「え、夕?」
「俺が如月夕のご主人様だから」
「は…」
驚いてぽかんとしている俺とは対照的に眞弥は次は前髪が気になるのか指で前髪を撫でている。
ていうか、あの毎日ゲーム三昧な夕が使用人なのかよ?!
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