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風邪をひいた。
仕事がアホみたいに忙しいこの年末の時期にまさかの体調不良になった。他の従業員に移すと大変な事になるので止むを得なく俺は仕事を休む事になり、今はベッドの上でぐうたらしている。
祭は案の定俺の事を心配していて、気が気じゃないみたいだ。それでも一緒に年越しが出来る事が嬉しいみたいで、正直どっちなんだって思う。多分心配なのと嬉しいのとどっちもなんだろうけど。
「仕事の事を考えると罪悪感でいっぱいだ…」
「仕事と僕のどっちが大事なのさ」
最近は仕事が忙しくて家に帰っても直ぐに寝たりだったので祭はかなりご立腹なご様子で、家にいる時に仕事の話をすると不機嫌になってしまう。
「ごめんって」
とりあえず右手でキツネを作って祭の頬にちゅっと指を当てた。
「こうしておけば僕が機嫌直すだろうなって思ってるんだろうね、下心が丸見えだから不合格だよ」
「手厳しい」
じゃあ次は…と祭の唇に指を当てた。恐らくまた安直な考えだとか言われて不合格なんだろうな。
「…」
「え、なに。何も言わないの?」
祭は俺の事をじっと見たまま動かない。
「そういう手もあるのかー」
そう言うと祭は俺の上に馬乗りになって両手でキツネを作り始めた。
ちゅっ、ちゅっ…
「や、ちょ、くすぐったい…!」
祭は手でキツネを作ったまま俺の至る所にキスを降らせてきている。成程、キス魔がキスを我慢するとこうなるのか…じゃなくて、なんだか普通に恥ずかしい…!
「隙あり!」
「っ、ダメだって言ったじゃん!」
視界にはしてやったり顔の祭がめいっぱいに広がっている。もう知らないぞ俺は。移っても知らないからな。
「これは時雨くんが悪い」
「何が」
「そんな可愛い事するのが悪い」
反省の色は皆無なようだ。
俺は満足気な祭の表情を複雑な心境で見ていた。
「あれ、12時過ぎてる」
「本当だ」
祭がとびっきりの笑顔を向けて俺に言った。
「明けましておめでとう、時雨くん」
「…うん、明けましておめでとう、祭」
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