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「こんにちは。ようこそ、恐怖の館へ」
文化祭当日を迎えた俺は女装をしたまま必死にクラスの出し物の受付係をしていた。そして何故か準備に一切参加しなかったらしい夕も一緒に受付をしている。ペアの相手が知り合いで良かった。本人は俺に全部任せてこっそりゲームをしているけれども。
この学園の文化祭は、初日は学生のみで運営し、2日目は一般開放するという少しだけ異色な形態をしている。なので初日である今日はちょっとだけ雰囲気が緩めだ。初等部や中等部の生徒も来ていいらしく、様々な年齢の人達が学園内を歩いている。もちろん全員男だけども。
愛想を振り撒きながら受付の仕事をこなしていると、不安そうな表情を浮かべて手を繋いだ小さな男の子2人がお化け屋敷に来た。
「あの…」
「うん、どうしたの?」
2人は何も言えずにもじもじとしてしまっている。もしかして、お化け屋敷に来てしまったのは良いものの、怖気付いてしまったのだろうか。
「お姉さんが一緒に入ってあげようか?」
この様子なら俺が後ろに着いて行ってあげれば入れるようになるかな。そう思って提案すると、2人は嬉しそうに頷いた。ごめんな、俺今お姉さんなのかお兄さんなのか自分でも分かっていなくてややこしい事言っちゃって。
「お願いします!」
「うん、よろしくね。夕、少しの間だけ1人で任せてもいい?」
「問題ない」
ようやくゲームの電源を切った夕が普通に受付をし始めた。なんだよ、さっきもそれだったら俺ももう少し楽だったのに。
「君達の後ろに着いていくからね」
若干笑顔が引き攣りながらも俺は男の子2人の後に着いて行った。
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