漫画のような出会い

2/2

126人が本棚に入れています
本棚に追加
/131ページ
 呉林優輔(くればやしゆうすけ)は、小学校の頃、ネットで見た学園ドラマに感動して、教師という職業に憧れを抱いた。  そして中学、高校と優輔自身が良い教師に恵まれたこともあり、大学に入るときにははっきりと教師志望となった。  大学卒業後、三年間の海外留学を経て、二十六歳の四月、英語教師として私立松ヶ丘高校に就任することとなる。         * 「あー、緊張するなー」  優輔ははち切れそうな緊張感と希望を胸に、松ヶ丘高校の門をくぐった。  明後日には入学式を控えているこの日、優輔は先輩教師たちと初顔合わせをする。  校舎の中に入ると、優輔はスーツのポケットから校内の案内図を取り出した。 「えーと、まずは理事長室へ行かなきゃいけないんだよな。ここが多分、学食。ということは、理事長室は……」  案内図と自分が今いる場所を照らし合わせながら、校舎の中を彷徨う。  優輔は案内図とにらめっこしながら焦っていたので、前から人が歩いてくることにまったく気づかなかった。  前から歩いてくる人物もスマートホンに視線を落としたままだ。  そして二人は必然的に正面衝突をした。 「いたたた……」  衝撃を受け、しりもちをついてしまった優輔は、一瞬なにが起こったのか分からなかったが、目の前で同じくしゃがみこんでいる人を、その大きな瞳に認めたとき、自分の前方不注意で、ぶつかってしまったことに思い至った。
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!

126人が本棚に入れています
本棚に追加