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芽生える嫉妬心
「……あれ? このスマホ、優輔さんのですよね?」
藤谷が四時間目の授業を終えて、職員室に戻ってきたとき、授業が入っていなかった優輔は、パソコンに向かっていた。
彼の机の上にスマートホンが置かれてあったのだが、それが藤谷の目にとまったのだ。……正しく言えばスマートホンについているストラップに。
「え? はい、そうです」
「……ちょっと見せてもらっていいですか?」
「はい、どうぞ」
藤谷が気になったのは、彼のスマートホンにぶら下がっている小さなクマのストラップで、おなかにハート型の天然石がついている。
それを見て、藤谷はなんとも嫌な気持ちに見舞われた。
……どう考えても、このストラップは女の趣味だよな。
心の奥でチリチリと嫉妬心がくすぶり始める。
優輔が実年齢よりずっと幼く見え、容姿が女性よりも綺麗だと言っても、やはり大人の男である。
鞄にマスコット人形をぶら下げてはいないし、愛用の文房具もシンプルなものである。
スーツもネクタイもいたって普通で、そう、明らかにそのクマのストラップだけが異質な少女趣味なのだ。
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