心強い存在

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   この日は顔合わせだけなので、もう帰ってもいいのだが、優輔はこのあと校内を見て回ることにしようと思っていた。  少しでも校内の様子を把握しておかないと、もしも生徒たちの前で迷子になったりしたら、目も当てられない。  そんなふうに思いながら、校内の案内図を眺めていると、藤谷が声をかけてきた。 「呉林さん、校内を見て歩くのなら、案内しますよ」 「あ、藤谷さん」  本当に何度見ても、かっこいい人だ、と思う。  そして彼の隣に温和な顔立ちの男性が立っている。  え……と、確か、この人は……。  先ほどすべての教師の紹介をされたのだが、いかんせん数が多すぎてイマイチ顔と名前が一致しない。  そんな優輔の内心を読んでくれたかのように、藤谷がその男性を紹介してくれた。 「呉林さん、この人は物理教師の新井先生。オレの、大学の先輩でもあるんです」 「え? そうなんですか。……よろしくお願いします」 「よろしく。呉林くん、分からないことがあれば、なんでも藤谷に聞いたらいいよ。親切になにからなにまで教えてくれるから」  新井はそう言うと、どことなく意味深な笑みを浮かべて、去って行った。 「じゃ、校内を見て回りましょうか、呉林さん」  藤谷は優輔に向かって、端整な顔を優雅に微笑ませた。
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