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世界を守護する竜と仕える巫女
そのドラゴンはこの世界で最後に残ったたった一匹だった。
増えることもなければ、絶滅することもない。
この国を守る神獣となったそのドラゴンはただ国をあらゆる災厄から守り続けていた。
ただ一匹でこの世界の神として、君臨していた。
与えられた廃城に据えられ、ドラゴンに寄り添うのは80年に一度選ばれる巫女一人。
「あぁ、つまり……」
それまで寄り添ってきた巫女は全てを聞いて涙を流す。
明日自分が死ぬこと。
なぜ80年に1度巫女が選ばれるのか。
巫女はドラゴンにすべてをささげ、尽くすというのに、彼が神や化け物としてふるまわず、彼女をとても尊重し、愛してくれたこと。
そして、明日からの彼がどうするのか。
すべてを。聞いて。
強いショックを受けたせいか、傍らにいる山のように大きなドラゴンとそれまでに仕えた多くの巫女の石像の姿がぼやける。
思えば。
その歴代仕えてきた巫女の存在は今代の巫女である彼女に重くのしかかっていた。ドラゴンはついぞ彼女と比べるようなことを口にはしなかった……最もすべてを知った今、それは当然のことなのかもしれないが、……それでも今の今まで巫女は意識していた。
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