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いつも通り
いつも通りの日だった。朝、いつもの通りの時間に起きて、いつも通りの道を通り、いつもの場所につく。そしていつものように過ごして、いつもの場所に行く。
君に会いたかった。君が扉の向こうにいると思えば、扉に腕を伸ばすことすら楽しく思えた。そしたら、また、いつも通りに君に会えると思ってたんだ。けど、そこは空白の部屋で君はいなかった。
会う約束をしていたわけでもない、ただ、ここに来れば君に会えるから、いつの間にか、この部屋に来て君に会うのが、僕のいつも通りになっていた。だけど、この部屋にいつも通りの光景はなく、ただの空白の部屋だった。その部屋は空白なのに、やけに重い空気に満たされていて。ただただ、僕はこの部屋に立っていた。
その時に当たり前がどれだけ幸福なことなのかということを考えた。今日も君に会えると思っていた。明日も明後日もその先も、ずっと君に会えると思ってた。だけど、そのいつも通りは幸運だったからこそ成り立っていたいつも通りだった。
いつも通りの未来を夢見続けるには、この世界はあまりにも残酷だったと思い知らされた。その世界に立ち向かうには僕はあまりにも無力で、ただこの空白の部屋で涙が溢れることを我慢することが僕にできる唯一の抵抗だった。
それから、どれだけの時間を過ごそうと、もう帰ってこないあの時間に縋りながら生きている僕は思いついた。
君への想いと一緒に過ごしたいつも通りの時間の思い出話をもって、君と過ごしたあの空白の部屋に色をつけにいこうと。
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