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駅について、やっと電車の扉が開く。
私は両足を開放。思いっきり駆け出した。
今の私にはそれしかない。
待ちきれなくて早めに来たつもりが大きく遅刻となってしまった。
どうしよう、すっぽかされたと思われたら。
もう会ってもらえなかったら。
ホームの階段を一気に駆け上り、二階の改札を出ると、駅の出入り口に一目散。
そして、駅のロータリーへの階段を駆け下りる。
こんなに速く足が動くのかってくらいに。
しかし、それは私の能力を超えていたようで、
「あっ、やば、足が」
足が縺(もつ)れてしまった。
「ああ~っ」
だめっ、転ぶ~。
バッグが手から落ちる。
バッグの中のモノがいくつか飛び散って行く。
体は、既に半分前に倒れている。
ダメ、もう打つ手なし。
大けがをしてしまうかも。
彼との再会も幻と消えてしまう。
そう覚悟した瞬間。私の横顔から胸にかけて何かがぶつかった。
ぬくもりのある、私を支える力強い壁。
背中に手らしきものが回っている。そして、とってもいい香り。
私は転ばなかったみたいだ。
抱きかかえられているような・・・。
いや、間違いなく抱きかかえられている。多分若い男性に。
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