焦げたクッキー

1/53
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/53ページ

焦げたクッキー

読書が好きなパパの書斎には、壁一面に本棚があってみっしりと本が並んでいる。 中には仕事に関する本や専門書も混ざっているが、そのほとんどはパパが学生の頃から買い集めた小説が並んでいる。 私もパパと同じく本が大好きで、よく書斎の小説を借りては読み漁っていた。 本棚の隅には、扉付の特別なケースに入れられた本があった。 どれも古めかしく、背に書かれた本のタイトルはどれもかすれていた。 パパが言うには、古本屋を回って見つけた宝物らしいけれど、それらは分厚い文献のような本ばかりで、私の興味がそそられるものではなかった。 ただ、そこに並んでいる一冊の本が、私は昔から気になっている。 『リーヤの冒険記』 隣に並ぶ本よりもずっと小さくて、半分ほどの厚さの本。 その本を見つけてから、ずっとパパに貸してほしいと頼んでいたけれど、『古いから』とか『貴重だから』とか言って、読ませてもらえなかった。 確かに、少し前の私なら雑に扱ってしまうかもしれない。 けれど、私ももう高校生。 大切な物の扱いぐらい出来る。 私はその本がどうしても読みたい。 だって、パパの本棚にある物語は全て読み終え、残っているのはあの本だけなのだから。
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!