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その日、私が学校から帰宅するとパパはまだ帰って来ておらず、ママは一階で夕食の準備をしていた。
パパの書斎は二階の、私の部屋の目の前にある。
書斎には鍵などかかっていないし、パパには『好きな時に入って、本を読んでいいぞ』と言われているから、私は堂々と書斎に入る。
本棚を左上から右下まで目を通し、新しい本が増えていないかを確認する。
ここのところ、パパは仕事が忙しいようで新しい本は増えていない。
そして、私は扉付きのケースの前に立つ。
そこもまた鍵なんてかかってはいないから、私はそっと扉を開けて目的の『リーヤの冒険記』を手に取った。
本は古くてシミもあり、乾燥してパリパリしている。
表には『リーヤの冒険記』と大きく手書きで書かれているけれど、どこを見ても作者名は書かれていない。
私はケースの扉を閉めると、そっと書斎を後にした。
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