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焦げたクッキー
読書が好きなパパの書斎には、壁一面に本棚があってみっしりと本が並んでいる。
中には仕事に関する本や専門書も混ざっているが、そのほとんどはパパが学生の頃から買い集めた小説が並んでいる。
私もパパと同じく本が大好きで、よく書斎の小説を借りては読み漁っていた。
本棚の隅には、扉付の特別なケースに入れられた本があった。
どれも古めかしく、背に書かれた本のタイトルはどれもかすれていた。
パパが言うには、古本屋を回って見つけた宝物らしいけれど、それらは分厚い文献のような本ばかりで、私の興味がそそられるものではなかった。
ただ、そこに並んでいる一冊の本が、私は昔から気になっている。
『リーヤの冒険記』
隣に並ぶ本よりもずっと小さくて、半分ほどの厚さの本。
その本を見つけてから、ずっとパパに貸してほしいと頼んでいたけれど、『古いから』とか『貴重だから』とか言って、読ませてもらえなかった。
確かに、少し前の私なら雑に扱ってしまうかもしれない。
けれど、私ももう高校生。
大切な物の扱いぐらい出来る。
私はその本がどうしても読みたい。
だって、パパの本棚にある物語は全て読み終え、残っているのはあの本だけなのだから。
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