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 到着。俺が小学4年まで住んでいた場所。しかし、そこには何もない。その当時俺が住んでいた、かやぶき屋根の家は、俺の家族が長岡に引っ越してすぐに取り壊された。この近くに住んでいるのは俺の親族だけで、今ではここは親族の共同駐車場として使われている。俺は車を停め、歩いて1~2分の最終目的地に向かった。  20年前に新築されたその家は、今でも十分新しそうに見えた。一階は駐車場で、スバル・レガシィが一台停められている。居住空間は二階だ。階段を上っていくと、玄関の引き戸は既に開いていた。俺は中に入る。 「雪絵ばあちゃん、来たよ」  俺が声を上げると、家の中からかっぽう着姿の老婆がニコニコ顔でやってきた。 「あっらー、翔ちゃん。ばか大きくなったねかね(とても大きくなったじゃないの)」 「そりゃ、俺だってもう二十歳(はたち)なんだすけね」俺は苦笑しながら言う。 「そうかー。はえそんげな歳んがか。早ええもんだて―(もうそんな歳なのか。早いもんだね)」  雪絵ばあちゃんはそう言って、笑った。  と言っても、雪絵ばあちゃんは俺の本当のばあちゃんじゃない。俺の父方の祖父の兄の奥さんだ。だから続柄(つづきがら)的には大伯母にあたる。俺の本当の祖母は俺が物心つく前に亡くなっている。家が近かったし、雪絵ばあちゃんと同居している長男夫婦は子供に恵まれなかったから、雪絵ばあちゃんは俺を随分かわいがってくれた。だから、俺にとっては本当のばあちゃん同然なのだ。     
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