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「さあさ、上がってくんない(ちょうだい)なじょうもじょんのびしてくんなせ(十分くつろいでください)」  ばあちゃんはそう言うが、俺は首を横に振る。 「せっかくだでも、そんげにじょんのびもしてらんねえんだわね。雪掘りに来たんだすけさ」  そう。 日本有数の豪雪地帯であるこの辺りでは、「雪かき」なんて生易しい言葉は使わない。除雪作業は「雪掘り」というのだ。  いつもなら同居しているばあちゃんの長男夫婦が雪掘りをしているのだが、今年はなんと二人とも一年間の海外赴任で家にいない。そこでうちの両親にヘルプが来たのだが、あいにくこの二人も仕事が忙しくて行けない。ということで、冬休みで実家に帰省していた大学三年生のこの俺、梶原翔太に白羽の矢が立ったのだ。 「そうか。ほしたら(それなら)、早速やってもらうかや」 「うん。スノーダンプと菅傘(すげがさ)とカンジキ借りるよ」 ---      image=512631386.jpg
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