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ultra realism
交差点の西側に佇む、小さなギャラリー。
三度目の個展の、今日がその最終日。
評判は…上々といったところ?
はた、と見開かれる瞼。
そのままに、釘付けとなる視線。
訪れてくれるみなは、はじめは驚愕の、やがては恍惚の表情となり、味わうように堪能してくれる。
そう。
私の油彩画を。
たとえば、ね?
会場の奥。
初老の紳士が一人、大判の額の前で、置物のように立ち止まったきり。
その目線は、それこそ食い入るように、カンバスを凝視したまま。
そのままに、深々、幾度も幾度も、頷いて。
その作品とは、そう。
半年前のこと、とあるコンクールにて、最高賞を得ていたもの。
言ってみれば、そう、私の最新の自信作。
けれど。
その、風景画も。
会場入口にある、あの人物画も。
静物の描かれてある、その小品も。
…違っている。
違っている、そう、全てが。
それぞれのモティーフの、その実在を、その本質を、そのありのままのリアルを。
そのままに描写、いえ、活写することを果たせている…とは、私には、どうしても。
鑑賞者のみなは、口々に、綺麗と、巧みと、美しいと。
それらの言葉は、私を微笑ませてはくれる、のだけれど。
けれど…そう、未だに。
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