第一章:知らせ

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本山真子は、金山製薬会社に薬剤師として勤めていた。薬学部を卒業した後すぐに就職し、勤続三年を迎えた。社会人になって三年は、まだひよっこも同然だったが、なんとか職場での任務を日々こなしていた。 夫となる坂谷俊矢と知り合ったのは、真子の通っていた横江薬科大学のキャンパス内だった。 同じゼミに配属されたこともあるが、それよりも二人の仲を縮めた大きな要因は、お互いに趣味が合ったからだ。 二人の趣味は、ライブへ行くことだった。 木島ひなこという歌手のライブへ行ったときに、真子は俊矢が来ていることを偶然にも発見した。 同じゼミで顔見知りの仲だったので、坂谷君も好きなの?と気軽に話しかけると、彼は恥ずかしそうに、うん、好き。と短く答えた。 少し顔を赤らめて恥ずかしそうに答える彼が、真子の目にはとてもかわいく映った。 ライブ終わりに、彼は真子に一緒に食事にでも行かないか、と聞いてきた。 終演が21時だったから、近所の飲食店が開いているか心配だったが、彼に興味が沸いていたので深く考えずに誘いに乗ることにした。     
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