第一章:知らせ

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赤いポストの投函口に茶封筒を放り込み、帰ろうとした時だった。 横から 「まこ! 久しぶり!」 と話しかける声がした。声のした方向に顔を動かし目を向けると、高校時代からの友人の顔があった。 岡部梨香だとすぐに分かった。 今流行りの韓国メイクをしていて雰囲気は前に会った時とは変わっていたが、彼女の親しみやすそうな、朗らかな面持ちは以前と何も変わっていなかった。 彼女とは高校卒業後も連絡を取り合っていた。 社会人になってからは、真子のほうが多忙を極めていたので、なかなか最近会えていなかったが、大学生の頃には2人で一緒に旅行をするほどの仲だった。 北海道へとふたり旅へ行ったのを最後に、少し疎遠になってしまっていたので、会えてよかった。 「りんかじゃん!元気にしてた?」 「もう元気もりもりよ。風邪なんて滅多にひかないんだから。まこってば、全然ラインくれないもんだからこっちからメッセージ送るの気が引けたよ~」 梨香は鼻を膨らませながら言った。 自分からはメッセージを送らない自分に、梨香なりに配慮してくれたのだろう。 「それより、今時手紙なんて珍しいもの書くんだねえ」 「お父さんにね。ちょっと知らせなきゃいけないことがあったから。電話とかメールとか苦手な人でさ。古いよね」 真子が手紙にしたのには理由があった。 父が、母にもらった手紙を、自室の机の引き出しの中に大事そうに保管していることを知っていたからだ。 何でも、その手紙というのが母が初めて書いた恋文らしい。 そのことを知って、真子もちょっとレトロなものに手を出してみたいという気持ちが心の片隅にあった。 「へえ、で?いったいどんな内容を書いたの? 梨香は子供のような無邪気な顔で探ろうとしてきた。 「いずれ、りんかにも言うよ。待ってて」 「わかった。教えてね」 梨香はそう答えると去って行った。
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