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 お昼になると、頭の真上でスマイルマークのような太陽が照っています。遠くの方ではクジラが潮を吹き上げているようです。Jの字を逆さまにして二つくっつけたような形に見えました。ナルミはうたた寝をしたり目を覚ましたりをしばらくくり反していました。すぐ近くをトビウオ達がヒュンヒュンと追い抜いていきました。そうしてしばらくゆったりと時が過ぎていきました。 「あれっ、あれは何だろう」とイルカが横の遠くの方へ顔を向けて言いました。  ナルミはイルカの顔の向いた方を見つめました。遠くの方で何かがヒラヒラ、ヒラヒラ、たくさん舞っているようでした。「あれは何かしら? 分からないわ」 「よし、行ってみようね」とイルカは言い、向きを変えました。  二人はその何か分からないものの方へ進んでいきました。  そのうち、ナルミの頭の上に何かが止まりました。ナルミが手を頭にやろうとするとそれは飛んでいってしまいました。しばらくすると今度はナルミの右の手の甲に何かが止まりました。ナルミはそれを見て言いました。「蝶だわ! 蝶々だわ」一匹の黒と橙のまだらの蝶がナルミの手の甲には止まっていました。それはまたすぐに飛び立ちました。ナルミは気が付いて周りを改めてよく見回してみました。  ナルミとイルカの周りには無数の蝶の群れが舞っていました。ナルミがちょっと恐くなるほどの大群が飛び回っています。辺りが暗くなるほどの蝶の群れです。青緑と黒の模様の羽のや、真っ黒に黄色の目玉模様のついたのや、真っ白に黒い点のついたのや、紫と黄と黒のや、色んなのが一面に舞っていました。  蝶の群れの中をようやく抜け出すと、また周りが明るくなりました。ナルミは振り返って眺めてみました。  蝶の群れが一本の帯のように広い海の端から端へと連なっています。  ナルミはイルカに訊ねました。「あの蝶は、どうしてあんな風になっているのかな?」  イルカは答えました。「蝶達は住みやすい場所を探して、島から島へ、大陸から大陸へ旅をすることもあるんだよ」 「ふーん」ナルミは言いました。「私達のように別の国へ向かってるのね」 「そうだよ」イルカは言いました。  あれっとナルミは気が付きました。「でも私達とは反対の方角に向かってるわ」
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