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「そうだね」イルカはちょっと目線を斜めに上げながら言いました。「ひょっとすると君のお(うち)の方へ飛んでいってるんじゃないかな?」  ナルミは考えました。──イルカさんの言う通り。うそじゃない。本当だわ。ナルミは胸の中がモヤモヤしてきました。  イルカは続けて言いました。「蝶達にとっては君のお(うち)のある所の方が素晴らしい別の国なんだね」 「うん。その通りだわ」ナルミは胸がちょっとドキドキしてきました。──このまま別の国へ行ってしまったら、もう戻れないのね。あの蝶は私がまだ知らない楽しいことをいっぱいいっぱい知ってるのかもしれない。そういえば私はまだ自分の街のことすらほんのちょっぴりしか知らないわ。まだ行ったことのないところばっかりじゃない。  ナルミは蝶の群れの方をまた振り返りました。  遠くの方で沢山の天使達が微笑みながら手招きしているような気がしてきました。  ナルミはもっともっと胸がやきもきしてきました。  そこでイルカが言いました。「どうします? このまま行っちゃいますよね?」白いイルカは目を閉じて微笑を浮かべていました。  ナルミはなんだかどうしていいか分からなくなって泣きそうになってしまいました。  イルカが言いました。「決めた! 引き返そう。あの蝶のあとをついていこう!」  ナルミは「うん!」と言いました。
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