白銀と鮮血

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「でも困ったな。こんな所誰も通らないと思ったのに見られちゃった。しかも君はまだ若いじゃない。非行少年って奴? ダメだよ11時までに帰らなきゃ」子供に諭す大人みたいだ。正論ではあるが状況を考えると非常に歪だ。 「僕はよく童顔だと言われるけど、これでも大学生だよ。そもそも君に言われたくないね」 「あれ、そうなの? それに私も大学生だから外出していても問題ないよ」  重要なのは年齢ではないと思うのだが。話が噛み合わない。随分と頓珍漢な返答をする。 「……いや、年齢の問題ではなく、殺人犯に言われたくないってこと。おまけに君は女の子だろ、何かあったらどうするんだ?」 「君もおかしいね。包丁を持っている人が目の前にいるのにその人の心配するなんて」 「女の子には優しくしなさいって家訓にあるから」 「やっぱりおかしい」  まぁ、僕もこの状況で凶器を持っている人物を心配して、軽口を叩いている時点でそう言われても仕方ないのかもしれない。 「ところで、なんの証拠があって私が殺人犯だって言うのさ。間違ってたら名誉毀損だよ」 「出会った時に、私、殺人鬼なのって自己紹介しただろ」 「冗談だよ。君も冗談で返したきたじゃない。奇遇だねって」 「思いっきり君の足元に死体が転がってる上に、血液が付着した凶器を持っているというこれ以上ない状況証拠が揃ってるけど」     
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