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「前者はともかく、後者は本気でいってるけど」
「見逃されたくないの?」
事実を言っただけなのに、眼前に包丁を突きだされてしまった。いつの世も正しいことを言う人物は迫害されるという好例だ。宗教裁判にかけられたガリレオガリレイもこんな気持ちだったのだろうか。ともかく、これ以上刺激するのはまずそうだ。
「いやはや、一目見ただけでわかる。君は高潔で高尚な精神を持つ、素晴らしい淑女だ。きっと君に似合う場所は華美で綺麗な宮殿か、はたまた、静寂で厳かな神殿かな」
「わ~凄く棒読み。そしてプライドはないの」
「プライドに命を懸けるほど大層な人生は歩んでないよ」
反論すると、何故か呆れたように突きだしていた腕を下ろしてくれた。嬉しいが呆れた表情をされたのは納得が行かない。
「まぁともかく、いい話相手になってくれたから見逃してあげるよ」
意外とあっさり見逃してくれるみたいだ。
「普通、こういう時は口封じするものじゃないのか? されたくはないけど」
「だって私は普通じゃないもの」
「……どんな偉人の言葉よりも説得力があるね」
凄まじく重みがある。むしろこれで、普通だと言われても困る。
「なら、僕はもう帰ってもいい? 帰って録画してた番組を見たい」
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