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「いいけど、夜道には気をつけてね。ニュースでやってたけど、ここら辺で殺人事件が多発してるみたいだから」
まさかそれを君に言われるとは。
「ご忠告どうも。殺人鬼に出くわさないうちに退散するよ」
「うんうん」
「あぁそうだ、君も気をつけて。女の子なんだから。……それに殺人犯もまだ捕まってないみたいだから」
帰る前にそう言うと驚いたように目を丸くして、直後に声を押し殺したように笑った。
「いやぁ、優しいね。そんなことを言うなんて狂ってるの?」
「そうだね。もしかしたらそうかもしれない。とりあえず言葉に甘えて僕は帰る。もう会わないことを願うよ」
そうして、僕が彼女に背を向けて歩きだそうとした瞬間、後ろから腹部を貫かれる感触が。……なんてこともなく、無事自宅についた。
蒸し暑さを誤魔化すように窓を開け、冷蔵庫からお酒を取り出し、TVを付けて録画してた番組を流す。そして、そのままソファーに体を投げ出す。箱の中の喋り声は耳に入らず、秒針の音がやけに耳障りだ。見ると、もう時刻は3時をすぎていた。
短針が一周して酔いも回った頃、ベッドの上で寝転がって、漏れた月明かりに照らされる部屋をただ見ていた。風が吹いてカーテンが揺れる。夜空が広がり月が顔を除かせる。
とても、綺麗な月だった。
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