理想郷

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 あいつと出会ったのは、三年前。 当時元夫を亡くし、コンビニで働いていた私に声をかけてきたのが、あいつだった。 客として来店したあいつのレジをたまたま担当したのがきっかけだったが、それから毎日のようにあいつが店に通うようになり、ある日にあいつから私に声をかけてきてそこから話すようになり、少しして付き合い始めた。  シングルマザーの私を気にかけてくれ、娘の為にお菓子を買ってくれるなど、あいつはとても優しかった。 私はそれが本当に嬉しく、忙しい毎日の励みにさえなった。 しかし、私は見事に騙されていたのだった。その優しさも、最初のうちだけだった。  結婚後すぐに、あいつは事あるごとに私に手を上げるようになり、競馬などのギャンブルによる借金もしてくるようになった。 元は、あんなに優しかったのに。私はあいつのそういうところを愛した訳だし、初めはそんなの嘘だと信じたかった。 しかしあいつとの結婚生活が長くなるにつれ、それが隠していた本性なのだと私は分かった。私が愛した方が、嘘の塊だったのだ。  あいつのせいで私は度々顔や体に傷を作ったが、半年前には手首の骨折にまで至った事もある。 そして遂に最近、あいつは紗恵にまで手を上げるようになった。  私は、紗恵の左頬をそっと撫でる。 「痛いよね?可哀想に」 必死にファンデーションで隠そうとしたが、隠し切れなかった頬の傷。 あいつが拳で殴った部分の肌が、青く変色してしまっている。 同じ傷を経験した身からしても、何とも痛々しい。     
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