「ぬくもり」

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「ぬくもり」

 口に入れると、ほろっとくだけて溶けるようになくなる。  そんな、祖母の作る肉じゃががすきだった。  まさに、母の味だ。    私が初めて人の「 」をしっかりと感じたのは意外にも最近のことだ。  私の両親は私が小学低学年の頃に離婚し、私は母のもとへ残った。父は自己中心的な性格だった。私はそんな性格が嫌いだった。  私が高校に入った頃だろうか、両親が離婚してから7年が経とうとしていた頃。  母が亡くなった。白血病だった。  もともと体が強いほうではなく、むしろ弱かった。私が物心ついたときからずっと入院していた。  母が白血病だとわかり入院をするようになった当時、私はまだ5歳。5歳の子どもには当然白血病などわからない。  まだ離婚していなかったこの頃、私は仕事帰りの父とよくお見舞いに行った。  ベッドに横たわり、天井一点を見つめていた母の姿は今でも鮮明に覚えている。  そんな母も、私と父を見たときには笑顔をこぼす。  しかし、私が小学3年に進級した頃――入院してから4年が経とうとしていた頃、父ははたりと連絡をよこさなくなった。お見舞いに行きたい私の気持ちをよそに、仕事を優先していた。     
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