<第二十七話>

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『大好きな人が、理不尽な死に方をして。冷静でいられる人なんていないと思うんです。加害者に同じ目に遭って欲しいと思うのは、人として当然じゃないですか。どうして苦しめられた側が泣き寝入りをしなきゃならないのか。法で裁けない相手を裁く方法が他にないのなら……殺人もやむなしと思ってしまう気持ち、わかる気がするんですよ。……殺しても愛する人は帰ってこない。同じ殺人者になってしまうのかもしれない。そんなわかりきってる、綺麗な言葉なんて誰も聞きたくないと思うんです。それでも……それでも耐えられない瞬間は誰に立ってあるはずだから。お説教した探偵や刑事さんだって同じ立場に立たされたらきっと……』  だから、響かないなって思ったんですよ、と純哉。 『だから、どうしても復讐を止めたいなら……俺だったら言える言葉はひとつですかね。復讐するならどうか……どうか自分が、幸せになるための復讐をしてください……って』  記憶の中の純哉の顔が熔けて、消える。桜の木の下――ゆっくりと研太は目蓋を開いた。 ――お前が何を言いたかったのか…今ならわかるよ。そうだよな。復讐なんかしなくてすむなら…誰だってやりたくなんかなかったよな。誰だって本当は、人なんか殺したくないに決まってるよな。  コートの下に隠したバタフライナイフ。小さなナイフなのに、やけに重いと感じてしまうのはまだ自分に覚悟がないからだろうか。  復讐なんか、きっと純哉は望まない。そんなこと自分だってわかっている。女を殺したところで、純哉が帰ってくることなどないのだから。  でも、じゃあ――自分は他にどうすればいいのか。相棒を殺された憎しみに耐えて、ストーカー女の執念に怯えて――大人しく殺されるか凌辱される日を待てとでもいうのか。何故自分が?何故自分ばかりが耐えなければならない?ここまで苦しめられるほどのことを自分はしたとでもいうのか?そして自分はこんなにも追い詰められているのに――あの女ばかりがのうのうと生きて、妄想に耽り、なんの罰も咎めも受けないなどと、そんなことがあっていいのか?  ――ざけんじゃねえよ…!
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