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暗闇の中でそれは、表面から薄ぼんやりとした白い光を放っていた。置いてある場所から考えて、これこそが、この神社における御神体というやつなのだろう。
幅五十センチメートル、高さと奥行きがそれぞれ二十センチメートルほどの直方体で、何かを収めた箱のように見える。しかしここまで来ておきながら、手に取って中身を確かめてみる勇気は湧いてこなかった。
この箱に入っている何かこそが、先ほど私に話しかけてきたものの正体だ。
自分でも馬鹿げた話だとは思ったが、何故かそうとしか考えられなかった。
『確認したい。真っ白な心が欲しいというのが、そなたの願いか?』
「そうですよ」
私は半ば自棄的な気持ちで答える。
「私のことを心から思いやってくれる人がいるのに、私はその人に対して同じような気持ちを返すことができない。そんな自分の真っ黒に汚れた心が、もう嫌になったんですよ」
『ではその願い、叶えよう』
箱は拍子抜けするほどあっさりとそう言った。だが、その言葉を素直に受け取るような私ではない。私がそんな人間であれば、未だに義母を疑う気持ちが残っていたりはしないのだ。
「代償は何です? 私が死んだ時に魂をもらうとかですか? それとも、残り寿命の半分とか?」
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