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翌日、私は義母のお見舞いに行った。本当は前日のうちに行っておきたかったのだが、廃神社で目を覚ました時点で、既に病院の面会時間を過ぎてしまっていたのである。
義母は、私のせいで事故に遭ったというのに、私が無事で良かったと言って泣いてくれた。そんな彼女の姿を目にしても、これまでの私であれば、きっとこの言動のどこまでが本心でどこまでが演技なのかと疑念を抱いたことだろう。
ところが、この日の私は違っていた。それまでは持とうと思っても持てなかった親愛の情が湧き、心から彼女を心配し、そして怪我がそれほど酷くなかったことを喜んだ。
私は悟った。
昨日言葉を交わしたあの箱は、本当に私の願いを叶え、私を真っ白な、きれいな心の持ち主にしてくれたのだ。
その日、私は、これまでのわだかまりが全部嘘だったかのように、長いこと彼女と話した。楽しい時間はあっという間で、いつの間にか夕方になっていた。
あまり遅くなると危ないからと義母が言うので、私は素直に帰ることにしたが、途中でどうしても寄っておきたいところがあった。
件の廃神社である。
私の願いを聞き届け、本当に私の心を真っ白にしてくれたあの箱に宿る神に、お礼を言いたかったのだ。
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