名犬フロマージュ

4/8
前へ
/8ページ
次へ
 わんわん、と吠えると、八百屋のおかみさんが出てきた。 「あら、フロマージュ、いらっしゃい。いつもお手伝い偉いわね!よしよし、さあメモを見せてね。あら、野菜は書いてないわね。お肉は仔牛のひれ肉の薄切りと生ハム。ならサルティンボッカ・アッラ・ロマーナじゃないの!いいわね、わたしも大好きよ。ほっぺたが落ちるわ!付け合わせは、そうね、インゲンとラディッシュ、クレソンもいるわね。さあ、どうぞ」  フロマージュは、じっとおかみさんの顔を見て、わんわんと吠えた。 「え、なあに?ああ、そうそう。ちょっと待っててね」  そういうと、おかみさんは奥から小さな包みを持ってきた。 「サルティンボッカ・アッラ・ロマーナならセージがないと!おまけしとくわ。チャオ!フロマッジオ!」  フロマージュはお礼にわんと吠えると、しっぽをふりふり八百屋を後にした。生ハムとセージの香ばしいにおいがとんがった鼻を刺激した。 (ああ、たまんない)  ぶるぶると身震いすると、フロマージュは先を急いだ。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加