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次にフロマージュが向かったのは酒屋だった。わんわん、と吠えると中から痩せた酒屋の主人が出てきた。
「おや、誰かと思えば、ムッシュー・フロマージュ!よくおいでなさいました。それではメモを、と。肉の薄切り、これでは何やら・・・食材を拝見いたしますよ。生ハムとセージ、ふむふむ。今日はサルティンボッカ・アッラ・ロマーナですな。ブラーボ!どれどれ、ワインは何を?おやおやおや!メモには料理用のワインとしか書いていませんな。でも、じつはご主人にワインを頼まれているのですよ。ちょっと待ってくれますかな?」
こう言い残すと酒屋は奥に引き込んで、ずいぶんかかってから瓶を二本持って戻ってきた。
「この間のロッシーニ風、当然赤を合わせました。ただし、肉厚の牛ヒレにトリュフとフォアグラですから、重いワインではしつこすぎてエレガントとは言えません。ボルドーの、やや若いサンテミリオンにしてみました。いかがでしたでしょうか?」
きちんとお座りで演説を拝聴するフロマージュ。
「さてムッシュー、今回は同じ牛ひれ肉でも白をあわせましょう。白ワインで作る料理なら肉でも白があうのですよ。そして、とっておきのシャサーニュ・モンラシェ、白のブルゴーニュですな。こくのある料理にはこれです。う~ん、ほっぺたが落ちますぞ。では、気を付けて」
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