女性だけ街

1/4
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ

女性だけ街

女性だけの街が出来た。 新たな法が試行され、実験的に始められたものである。 この街に住まう権利を有するのは、戸籍上「女」と書かれた者だけだ。 街には自治権までが与えられているので、行政があり、司法に警察機能まで備えている。 もちろん構成員は全てが女性だ。 住民は口を揃えて言う。 「この街は快適である」と。 すると国内では、次のような不満が叫ばれるようになった。 彼らは「不公平だ。男だけの街も造れ」と言う。 その圧力の強さから、とある一区画に同じものを用意した。 街の機能も同様に自治権が与えられ、あらゆる職や権限が男性によって占められた。 ここの住民も口を揃えて言う。 「この街は快適である」と。 女性だけの街に住む住民は、かつてないほど解き放たれた暮らしを送った。 性犯罪を恐れる心配がない。 ゆえに夜道を独りで歩こうとも、貞操においては安全である。 美醜の差に悩む必要がない。 男の目線が消えた事で、容姿は個体識別の機能しか持たなくなったのである。 男性だけの街に住む住民も、我が世の春を謳歌した。 家庭や恋人の束縛から解放された。 毎月の稼ぎと有り余る時間を、己の趣味嗜好に費やせるようになったのだ。 収入格差に悩む必要がない。     
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!