女性だけ街

2/4
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
女から『品定め』されずに済むので、切磋琢磨するのは贅沢をしたい住民ばかりとなった。 それでもやはり、人肌が恋しくなる時がある。 そんな場合には電子データだ。 機器を頭に装着し、完全バーチャルな立体世界に身を投じて、完璧な異性としばしの逢瀬を愉しむのだ。 相手の容姿や性格、趣味や口癖すら自分好みに設定できる。 さらには細かな会話ですら、思う通りに調整が可能である。 一切傷つけられる事のない恋愛。 あらゆる事象をコントロール可能な恋物語。 利用者は口を揃えて称える。 「快適である」 「快適である」 それらが与えてくれる絶対的な安心感は、異性を拒みがちな住民にすら大いに評価された。 この2つの街の大成功は世界中に知られるようになり、あちこちで反映されるようになった。 あらゆる国が仕組みを真似る。 やがて男女一つずつでは足らなくなり、各国内で徐々に街の数が増えていく。 住み分け事業は留まる事を忘れて増大し続けたのだ。 そして全ての人間が、性別のみで隔てられた。 だが、その現状を危惧するものはおらず、決まって褒め称えるのである。 「快適である」 「快適である」 「快適である」 世界に住まう人が各拠点に集結してしまうと、各地に空白地帯が生じるようになる。 街から一歩でも出れば治外法権だ。     
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!