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女から『品定め』されずに済むので、切磋琢磨するのは贅沢をしたい住民ばかりとなった。
それでもやはり、人肌が恋しくなる時がある。
そんな場合には電子データだ。
機器を頭に装着し、完全バーチャルな立体世界に身を投じて、完璧な異性としばしの逢瀬を愉しむのだ。
相手の容姿や性格、趣味や口癖すら自分好みに設定できる。
さらには細かな会話ですら、思う通りに調整が可能である。
一切傷つけられる事のない恋愛。
あらゆる事象をコントロール可能な恋物語。
利用者は口を揃えて称える。
「快適である」
「快適である」
それらが与えてくれる絶対的な安心感は、異性を拒みがちな住民にすら大いに評価された。
この2つの街の大成功は世界中に知られるようになり、あちこちで反映されるようになった。
あらゆる国が仕組みを真似る。
やがて男女一つずつでは足らなくなり、各国内で徐々に街の数が増えていく。
住み分け事業は留まる事を忘れて増大し続けたのだ。
そして全ての人間が、性別のみで隔てられた。
だが、その現状を危惧するものはおらず、決まって褒め称えるのである。
「快適である」
「快適である」
「快適である」
世界に住まう人が各拠点に集結してしまうと、各地に空白地帯が生じるようになる。
街から一歩でも出れば治外法権だ。
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