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部屋には未完成で終わった絵が、溢れている。
彼女は決して、未完成の絵を、相手には見せなかった。
完成した物を見て貰えなければ、自分の全てを込めた思いを、見ては貰えないと思っていた。
自分の本当の気持ちを、見ては貰えないと。
だから彼女は、いつも急いで絵を描く。
急いで描いているからと言って、決して手は抜かない。
相手の余命に間に合う様に、計算し、丁寧に描いている。
だが神様と言うのは、本当に意地悪だ。
いつも余命より早く、命を奪って行ってしまう。
そのせいで、彼女の計算は狂い、いつも間に合う事が無く、結果未完成で終わってしまう。
だから今回は、余命よりも一週間早く絵が完成する様に、描いていた。
今彼女が描いている絵は、ペガサス。
夢の国の住人だ。
その人はいつも夢ばかりを見ていて、よく色んな夢を語っていたからだ。
死後はペガサスに乗って、夢の国へと旅立つのだ。
今度こそ、今度こそ絵を完成させ、無事生きているうちに、絵を見せ、プレゼントするのだ。
もう神様に、邪魔はさせない。
彼女の決意は固かった。
彼女はいつも必死だったが、今回はいつも以上に、必死だった。
何故なら、今回絵を描いてプレセントをしようとしている相手は、婚約者だったからだ。
彼はいつも言っていた。
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