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アキラくんから離れようとしているのがわかったのか、アタシの中の誰かもそれを邪魔することはなかった。
だけど、アタシは、それを誰かに止めてほしかった。
ここでアキラくんから離れるのは、いじめを認めたことを……そして、アタシの恋の終わりを意味する。
アタシは、心のどこかでアキラくんが止めてくれることを願っていたのかもしれない。
廊下を走るアタシは、ある人に肩を捕まれた。
アタシは、涙で濡れた顔を隠しながら振り向くと、そこにいたのはツカサくんだった。
「ハアハア……レイカさん……ゴホゴホ……大丈夫?」
ツカサくんじゃないという落胆よりも、息を切らせるツカサくんが可愛かった。
アタシは、全力で走ったわけでもないし、廊下なのでそれほど距離もあったわけでもないのに、女子並みの体力、いや、それ以下の体力のツカサくん。
「レイカさん、泣いてるの?」
そういって、白いハンカチを出してきた。
ハンカチならアタシも持っているが、スカーフもハンカチも何に使ってきたのかぼろぼろで、今もポケットの中でぐちゃぐちゃになっている。
ツカサくんは、カッコいい部類の容姿に入るけど、男性的で、一見するととてもそんなところにまで気が回ってないように見えるが、そのハンカチは綺麗に折り畳んでいた。
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