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アタシは、そんな彼に一瞬ときめいた。
アタシなんかのために、彼の優しさに、アキラくんへ失恋した心が揺らいだ。
「あのね……」
アタシは、ツカサくんに助けを求めようとしたが、アタシの中の誰かは、また走り出そうとした。
アタシは、ツカサくんと離れたくなかったのか、
それとも、アタシの中の誰かに好き勝手されたくなかったのか、
それを強引に踏みとどまった。
恋する不良を嘗めんな!
「アタシの中に誰かいるの?」
ツカサくんは、中腰で踏みこらえて突拍子もない事を話すアタシに驚いた表情を見せたが、
「原因は何だろう?何かの霊が入ったのかな?それとも、外部から誰かが操っているとか?」
すぐに冷静に判断してくれた。
確かに外部からなんて可能性考えてもみなかった。
「とりあえず、豊橋先生読んでくるから……なんとかそこで待ってて。」
ツカサくんは、職員室に向かって走り出した。
アタシが中腰で堪えていると、突然、アタシの大量の皮膚が剥け落ちた。
まるで脱皮。
まさか、この皮で外部から操っていたのだろうか?
「うわーっ!」「キャー!」
アタシがそう叫ぶと、アタシの中から何かが消えた。
それは
アタシの中にいた誰かだったのか、
ツカサくんへの恋心だったのか……
虚無感に襲われたアタシは、そのまま寝込み、豊橋先生に女子寮まで運ばれた。
数週間後、アタシは、学校から転校した。
あのときのツカサくんへの恋心も、もうアタシには無い。
きっとどこかに誰かが持っていってくれたのだろう。
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