第6話:部分入れ替わり(カント)

6/7
28人が本棚に入れています
本棚に追加
/69ページ
「ねえ、タクミくん。」 「何?」 「タクミくんは、何で私なんかを好きになったの?」 「鮫島さんは、私を助けてくれたから。それに、いつも私の買い物に付き合ってくれて、その……鮫島さんといると、毎日が楽しいから。」 「……ありがとう。」 自分で聞いておいて、自分が恥ずかしくなる。 「でもね、元に戻ったら、私……お、おれが、鮫島さんを守れるようになるから。」 「タクミくん!」 私は、タクミくんの前に顔を出した。 「……」 「まだ元に戻ってないんだし、無理に「オレ」って言わなくていいから、私のことは「カヤ」って呼んで。」 私は、タクミくんの返事を待たずに、自分の唇でタクミくんの口をふさいだ。 1週間後、 祖母が倉庫に入ってくるのを感じた私たちは、繋いでいた手をとき、急いで服を着た。 「おや、早いね。もう起きてたのかい。」 「いや、ほら、元に戻れるのが待ち遠しくて……ね、タクミ。」 「うん、カヤ。」 「ふーん。じゃあ、始めようかね。」 私たちは、もう一度箱の中に入っていく。 私は、赤い箱の中に、タクミは黒い箱の中に。
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!