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インターミッション1
俺の名は俊助。
あの日、俺はイライラしていた。
前日に彼女に別れを告げられ、仲間と共に僧ヶ岳市商店街に足を運んだ。
そこで見つけたショートカットの女性。
はっきり言って別れた彼女よりもキレイだ。
「お、あいつをナンパしますか?」
ナンパか……でも、失敗すれば、フラれたときの傷でもう立ち直れないかもしれない。
俺は、けっこう繊細なんだよ。
「あ、でも男連れですね?」
ほら、もう傷付いた。
「どうします?男ボコボコにして、強引に奪っちゃいます?」
なるほど、そんな手は思いつかなかった。
「よし、じゃあ、それで。」
「ちょうど店に入っていきましたね。」
「チャンスじゃないですか。店の前で待ちましょう。」
俺たちは、店の前まで移動した。
「いいですか、まずは男にぶつかるんです。」
「そうです。そこから謝ってきたとしても「てめえ、何だ、その態度は?」で押し通して、殴りかかるんです。」
「で、残った女性を連れ去っていく。」
「ね、完璧でしょう?」
完璧だ。完璧な作戦だ。
配役がまだよくわからないが、コイツらが言うんだから、完璧な作戦なんだろう。
そんなことを聞きながら待っていると、誰かが背中に当たった。
振り向くと、あの女性だった。
「あ、すいません。」と謝ってきたので、俺は「てめえ、何だ、その態度は?」と言い、胸ぐらを掴んだ。
仲間たちが慌てはじめ、「違います。」「殴るのは男の方です。」と小声で言っている。
なるほど、そういう作戦だったのか。
すると、女性が「きゃ~!」と声をあげ、男が「やめてあげてください。」と割り込んできた。
「チャンスです。軌道修正しましょう。」
軌道修正?軌道修正か……とりあえず、店の前で待つところからやり直せばいいのかな?
しゃがみこもうとしたとき、男の顔を見て「ん?お前、どっかで見たな。」。
どこかで見た事がある顔だと思った。
「あ!こいつ、アレですよ高等部にいたすごく運がいいやつ。」
なるほど、後輩か。しかも、いいやつなのか。
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