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いつもなら明るい光が差し込むリオンの部屋も、今日は天気が悪い為に昼でも電気を付けなければ暗い。
強くなる雨に比例して、激しさを増す風。
時折、稲妻が空を駆け巡る。
ユーフェンは彼女をベッドに座らせると、窓から外を眺めた。
「天気、悪くなる一方だね。これじゃあ視察どころかアシュリ達、国に帰れない」
通常なら一泊して終わる、簡単な国の視察。
この嵐が収まらない限り、あの兄妹はずっとここに滞在することになる。
(……早く晴れてほしい)
本当はあまり思ってはいけないことかもしれないが、リオンは切実にそう思った。
ユーフェンは窓の隙間から雨が入ってこないよう鍵を閉めた後、棚から一つだけグラスを取り出し、そこに水を入れた。
「ここまで歩いて来れる?」
グラスを机の上に置くと、ベッドに座っている彼女に呼びかけた。
どうやら隠の気が抜けているかどうか、という彼なりの確かめらしい。
廊下で密着していたこともあり、リオンはもうほとんど回復していた。
少し違和感はあるものの自分で立ち上がり、ユーフェンの所まで移動する。
「良かった、もう大丈夫みたいだね」
彼はリオンにグラスを差し出す。
まだ微かに残っているだろう隠の気を、清浄な水で洗い流せるようにというユーフェンの気遣いである。
リオンは嬉しそうに水を一口、美味しそうに飲み込んだ。
「それじゃあ僕はもう行くね」
「え……?」
途端に、夢から覚めた気がした。
「行くって……?」
「応接間。アシュリとグルーヴ、父上が待ってるからね」
それはきっと、この天気と視察の相談であろう。
勿論、ユーフェンが行くのは仕方のないことなのだが。
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