第17章

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(やだ……嫌だ……っ) まるで、心を握りしめられたように感じる胸の痛み。 ユーフェンが、あの二人の元へ行く。 それがどういう意図であっても、彼女には耐えることができなかった。 「……ないで」 「……リオン?」 発言を聞き取れなかったユーフェンは、彼女の傍に近付く。 彼女から笑みは消えていた。 そこにあるのは、ただ辛そうな顔だけだ。 「ユーフェン、行かないで」 自分が我が侭を言っていることに、彼女は気付いていた。 相手を困らせてしまうことも、わかっていた。 それでも、溢れ出す気持ち。 流れ出る感情。 「どうしたの?」 グラスを握る彼女の手は、僅かに震えていた。 それに気付いた彼は声をかけるが、泣きそうな顔をしたまま、黙るだけ。 彼はリオンに触れようとするが、突如外に異変が起こった。 空を駆け巡っていた稲妻が、とうとう痺れを切らしたように――落ちた。 ガシャ――ンッ 「……っ!」 二つの音が、重なり合った。 震えていた彼女の手から滑り落ちたグラスは、床に破片となって散らばっている。 そして、プツリと視界が真っ暗になった。 「……停電!?」 どうやら城中の電気が消えたらしく、廊下では使用人達が慌てふためいている。 「大変だ、皆混乱して……っ」 「ユーフェン……!」 真っ暗で何も見えない。 だからこそ、募る不安。 「ユーフェン、いやだ……っ」 この暗闇の中、彼は行ってしまうかもしれない。 ――自分を置いて。 「行かないで……!」 もがくように、彼を探すように必死に手を伸ばす。 「……リオン! それ以上歩いちゃいけない!」 床に散らばったグラスの破片は、暗闇の中、鈍く光っている。
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