第17章

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リオンは部屋の扉を指差した。 「ユーフェン、行かないとね。皆、ユーフェンを待ってるんだもんね」 応接間ではアシュリやグルーヴ、王様。 停電している今、混乱している使用人達を鎮めるのもユーフェンの役目。 「……うん。じゃあ僕は行ってくるよ」 ユーフェンも彼女から手を離した。 離れていく体温が、少し名残惜しい。 「灯りがつくまであまり動いちゃダメだよ。破片に気をつけて」 足元に散らばっている破片を跨(また)ぐと、彼は部屋を出て行った。 騒がしい使用人達の元に。 「……私は大丈夫。もう寂しくない」 ちゃんと心に、残っているから。 ユーフェンの言魂が。 温かい、体温が。 「……っ」 途端に視界が明るくなった。 暗闇に慣れた瞳が、眩しさで上手く開けられない。 電気がついたのだ。 (ユーフェンだ……) リオンは外を見た。 未だ降り続ける雨が、少しおさまっているようだった。 「ユー兄様!」 応接間を開けたユーフェンに飛び付くアシュリ。 胸にしがみつき、白い肌をした額をそこに付ける。 「ユー兄様、今までどこに行ってらしたの? 停電になりましたし……、わたくし恐かったです」 「ごめんね、アシュリ。遅くなっちゃって」 彼はアシュリを自分から離すと、一つに結わえた長い髪を軽く撫でた。 彼女は嬉しそうに目をつむり、彼の服にすがる。 それを見ていたグルーヴは、眉をしかめた。 「……ふむ、ユーフェン殿。もしやさっきまでずっと……あの子の所に居たのかい?」 「……っ!?」 途端に、アシュリの表情が冷ややかに変わる。 「そ、そうですの?  ユー兄様、今までリオンと一緒に……?」 ユーフェンは困ったように微笑むと、彼女の肩を軽く叩いた。
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