第17章

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「うん、そうだよ」 「!」 手触りの良い、フリルがたくさん付いたワンピースを力強く握る小さな手。 「父上、遅くなってしまい申し訳ありません」 応接間のソファーに、大胆に座る王。 銀の色をした髪が目にかかり、邪魔くさそうに手で払う。 「構わん。さっさと計画を始めなさい」 「……はい」 ユーフェンは王に頭を下げると、机の上に大きく国の地図を広げた。 視察の経路を決めるために開かれた、この会議。 王は座ったままそれを見物し、グルーヴは地図がよく見えるように机の傍に駆け寄った。 「アシュリ? どうしたの?」 既に始まろうとしているにも関わらず、アシュリは扉の前から動かない。 先程のユーフェンとの会話から、時間が止まっているようだ。 「アシュリ……?」 下を向いて顔を上げようとしない彼女を覗き込むユーフェン。 突然のことに驚いたアシュリは、ばっと顔を上げた。 「あ、あの、ユー兄様……!」 「ん? どうしたの?」 彼女は恥ずかしそうに頬を赤く染めると、小さな声を出した。 「あの、申し訳ありませんが……少しお手洗いに行ってきてもよろしいですか? 急いで戻ってきますから……っ」 もじもじと体をうねるアシュリに、ユーフェンはおかしそうに笑った。 「……ふふっ。いいよ、行っておいで。待っててあげるから」 「ユー兄様、すぐに済ませてきますわね」 彼女が部屋を出て行く最中、目が合ったグルーヴ。 彼女の口端が、僅かに持ち上がる。 (マイハニー、まさか……?) (お兄様、時間稼ぎよろしくお願いしますわね) アシュリは急ぎ足で出て行った。 その足の向く先、リオンの部屋へ。 破片をちり取りに入れ、布にくるんで袋に入れる。 リオンはグラスだったそれを、袋越しに眺めた。 (私……そんなに手、震えてたのかな……) 『震えないで』 ユーフェンに言われるまで気付かなかった。 自分が震えている自覚がなかった。
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