第17章

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ただ、ユーフェンが行ってしまうことの方が恐かった。 「……ガラス、捨てに行こう」 彼女は袋を持って、自室の扉を重々しく開ける。 ユイランの部屋の前を通り、また焼却室に向かう。 「……?」 雰囲気が、変わった。 奇妙で、嫌な空気。 一度感じたことのある殺気。 淡いピンクの唇はにっこりと笑ってはいるが、丸く大きな瞳はリオンの姿を離さない。 何かの呪縛にでもかかってしまったかのようだ。 「……ア、シュリ様……?」 ガシャリ、と持っていた袋を落とした。 焼却室での出来事が思い返される。 あの時は急な雨で話は途切れたが、ここは室内。 逃げ道はない。 (恐い……) 今度は一体何を言われるのだろう。 何を責められるのだろう。 可愛らしい口から発せられるのは、悪魔のような囁き。 声を聞くことに、恐怖を感じる。 「……リオン」 呼ばれて、心臓がはねあがる。 返事をすることもできず、恐る恐るアシュリを見る。 彼女はもう、笑ってすらいない。 「ねぇリオン。あたし、時間がないの」 発言とは裏腹に、ゆっくりと言葉を紡ぐ。 まるで、一言一句聞き洩らすな、とでも言うように。 「だから、短刀直入に言うわ」 その後発せられた言葉は呪文のように、リオンを動けなくした。 心の芯が、折られてしまいそう。 また、心に迷いが生まれそう。 「あたしね、ユー兄様のお嫁さんになるの。もう婚約もしてるのよ?」 頭が、混乱する。 「たかが使用人のくせに、でしゃばらないで」 動けない。 足が床に吸い付いてしまったかのように、言うことを効かない。 「婚約……?」 (そんなこと、ユーフェン一言も……) アシュリは長くまとまった自分の髪を手で払う。
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