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風が強さを増してくる。
降り出した雨も激しくなってきて、鞭のようにバチバチと城の壁や窓に当たる。
『勘違いしちゃって、バカみたいね』
(勘違い……?)
フラフラと城内の廊下を歩くリオン。
大粒の雨に打たれ、髪からは雫が滴り落ちる。
アシュリの言葉を聞いた後、突如降りだした雨。
幸いにも会話は中断され、二人は城内へと入った。
『ヤダァ、濡れちゃった……。早くユー兄様のトコに行って拭いてもらわなくちゃ』
(本当に、ユーフェンに拭いて貰うのかな)
彼女が向かったのはユーフェンの所、まず間違いない。
(……でも、二人じゃないよね。グルーヴ様もいるだろうしリルさんも……)
「……リオン?」
(嫌だな……。私はあくまでもユーフェンの友達……)
「リオン!」
「……え?」
呼びかけられて立ち止まる。
振り向いて見てみると、そこにはライトが立っていた。
「どうしたの? 凄いずぶ濡れだよ?」
ライトはポケットから小さなタオルを取り出すと、必死に背伸びをしてリオンの頬にそれを当てた。
その様子に優しく彼女は微笑むと、ライトの視線と同じになるように腰を下ろし、膝をついた。
「ありがとう。ゴミ出し行ってたら、雨に打たれちゃった」
金の髪を撫でると、ライトは照れくさそうに笑った。
大きくて丸い青の瞳が、彼女の姿を捕える。
「ね、もうアシュリ達には会った? もし会ってないなら、ボク紹介してあげる。二人共、とても楽しくて……」
「……ううん。大丈夫、お会いしたよ」
アシュリ。
その名前を聞くと、先程の言葉が連想される。
『勘違いしちゃって……』
思っていたよりも、その言葉の威力は彼女にとって大きかった。
気にしすぎだと言われればそれまでかもしれないが、彼女にとってユーフェンは謎多き人物でもある。
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