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「明日ね、天気も良くなりつつあるから視察に行くみたい。ユー兄様がここに帰って来る頃は……心、ここにあらず、ってことになってるかもね」
それだけ言うと、アシュリは踵を返す。
彼女の顔に笑みはなかった。
だがそれは、悪意や敵意の意味を含むものではない。
それはもっと別の意味のもの。
(心ここにあらず……? アシュリ様、何をするつもりなの……?)
去って行くアシュリの背中を見ることしかできない。
彼女の言葉の意味から、『何か』が起こるのは視察のとき。
アシュリもきっと、リオンと同じように己の感情がまた抑えきれないのだろう。
(私、何もすることできない……。ユーフェン……)
この時、既に運命の歯車は回り始めていた。
ゆっくりと、けれど確かに――。
それに気付いていたのはただ一人――アシュリだけであった。
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