0人が本棚に入れています
本棚に追加
翌日、あれほど強かった雨も今は小降りになり、激しく吹いていた風も弱まって。
良い天気とは言えないけれど国の視察は行われ、朝早くにユーフェン、アシュリ、グルーヴの三人は城を出て行った。
「おい、何してんだよ」
「……え?」
不可解そうに見つめてくるユイランに気付き、リオンは手元を見た。
持ってきたのはユイランの食事。
机の上にそれを置き、そしてもう一つの食事を向かい側に。
「あ……っ」
いつもなら持ってくるのは彼の食事だけなのだが、何故か、今ここに持ってきているのは二人分、リオンの食事であった。
「あ……はは、折角だから一緒に食べよっか、朝ご飯」
彼女は苦笑いを浮かべながら、二つのグラスに水をつぐ。
その様子を見ていたユイランは、ベッドから机の方に移動した。
「何を気にしてんだ」
「……え?」
椅子を引いて、そこに座るユイラン。
相変わらず目線は合わせず、淡々と喋る。
「辛気くせぇんだよ、ツラが」
「……ごめんなさい」
彼はフン、と鼻を鳴らすと、「そういや……」と言葉を続けた。
「お前、何で昨日あいつに余計なこと言ったんだ?」
リオンは首を傾げながら、ユイランの向かいの椅子に座る。
訳のわかっていない彼女に、ユイランは不機嫌そうに言った。
「グルーヴに決まってんだろ。何で俺の付き人だって言いやがった」
それは、つい昨日のこと。
グルーヴがこの部屋でユイランに因縁をつけている時、彼は彼女を『冷やかし』だと言った。
けれどその後、リオンはグルーヴに『自分は付き人』だと――。
「あいつは敵に回さねぇ方がいいんだよ。……余計なこと言いやがって」
ユイランはパンにかぶりつく。
眉間に皺が寄っているが、彼女は不思議と恐いとは思わなかった。
彼が、自分を想い遣ってくれていると思えたから。
「ありがとう」
自然と出た言葉だった。
最初のコメントを投稿しよう!